オキナワチドリ用の培地組成 

  培地というと難しそうに聞こえますが、要するに肥料と砂糖を水に溶かし、寒天で固
めたものです。筆者は市販園芸肥料の「粉末ハイポネックス」を使って作る「ハイポネッ
クス簡易培地」を使用しています。(>参考:難発芽地生ラン用 修正培地「関東2号」

 粉末ハイポネックス120g容器=定価580円

<筆者の使用培地>
粉末ハイポネックス(6・5−6−19)  1.5〜2.0g
グラニュー糖(コーヒー・紅茶用で可)  25〜30g
粉末寒天(製菓用で可)  7.5〜8.0g
(軟水地域であれば水道水で可)  1000 ml
PH  6.0

 専門研究者は「培地のどの成分が生長に必要/不必要か」を調べるため、含まれ
ている成分がすべてわかっている培地を作成しなくてはなりません。ですから不純物を
含まない化学物質を正確に測り、混ぜあわせて培地を作ります。

 しかし趣味家の場合、不純物がたっぷり含まれ、成分がよくわからない培地であって
も、発芽して育ってくれればそれで充分です。


*無菌培養についての参考サイト

  >ランのバイオ入門

  >ぱちゅぶり ランの無菌培養の部屋
  
  >マニアの為の園芸教室ー無菌培養に必要な機材

  >ポリエチレン袋と電子レンジを用いた低コスト無菌培養システム 



以下、細かい実践上の注意。
(普通の人は、あとは読まなくていいです。)


 <付:筆者研究ノート・・未整理データ覚え書き>

・前述の組成はあくまでオキナワチドリが育成できる最低限の培地であり、けっして最適培地ではない。
他のランはこの組成では育たない場合があり、濃度や添加物を改変する必要がある。

・上記は播種用培地。育苗培地には上記と成分が異なる培地のほうが生育が良い。(組成のヒントを後述)

・発芽後に新しい培地に移植すると生育が良い。
まばらに発芽して過密ではない場合でも、移植したほうが明らかに生長が良くなる。

・オキナワチドリには粉末ハイポネックスを使用する。
他のタイプの液体肥料は、地生ランの播種培地としては不適当な場合が多い
(逆に粉末ハイポネックスを使ってはいけないランもある。これについては後述する)

・粉末ハイポネックスはアンモニア性窒素1.0%、硝酸性窒素5.5%と窒素源は硝酸主体。(<ここがポイント)
他の園芸肥料(特に液体タイプ)はアンモニア優位のものが多いが、アンモニアは植物に対して毒性がある。
自然環境ではアンモニアは土壌に吸着されたり、細菌によって無毒化されるため大量使用しなければ問題にならな
い。ところが無菌培養の場合はアンモニア毒性がモロに発現する。好アンモニア性の植物ではある程度アンモニア
濃度が高いほうが生育が良いが、デリケートな植物はアンモニアの多い培地だと枯死する。
アンモニアと硝酸の適正比率は植物によって大幅に異なる。

・普通の緑色植物は、二酸化炭素と水と肥料があれば、光合成によって自力で栄養分を作り出すことができる。
ところがランの場合、発芽直後には光合成能力が低く、必要量の養分を体内で合成できない。
そのためエネルギー源として糖分が必要。また、ラン科植物は発生初期には硝酸態窒素を利用する能力が乏しく、
アンモニア態窒素か有機態窒素が培地に含まれていないと初期生育が遅いか、あるいはまったく育たない。
そのためある程度のアンモニア態窒素の添加が有用であるが、前述のようにアンモニアには毒性があり大量添加は
避けなければならない。

・それ以外の有機物も自力で作れない場合があり、たとえばヨーロッパ産のオルキスではチアミン(ビタミンB1)、
セッコクはナイアシン(ニコチン酸)が培地に含まれていないと、発芽しても生長できない。

・趣味的には培地に野菜や果物(ジュースでも可)などを加えることで対応できるが、地生ランの場合は過剰の添加
物が含まれていると、かえって生長が悪くなったり、枯れることもある。

・培地に必ず加える必要のある「必須栄養素」はランの種類によって異なり、その最適量も種類(あるいは品種)によ
って差がある。何かを添加する場合は、必ず添加量を変えて(無添加も含めて)比較検討すること。

・デンドロビウム用培地にはリンゴジュースが良いがブラソレリオカトレアには良くないとか、ナゴランには柑橘類の果
汁(100〜200ml/l) が合うとか、欧米の地生ランはパイナップル果汁(10〜25ml/l)を添加すると発芽率が良いとさ
れているが育成培地ではむしろ生育を阻害するのでバナナに変更すべきだとか、いろいろ報文がある。

・・が、実際に試してみるとかなり例外もあるようだ。ランの品種によって適正添加量が異なるとか、果汁の品種や収
穫時期による成分差などもあるかもしれない。余談だが沖縄のナゴラン育種家がナゴランにはシークヮサーが一番
良いと言っていた。(<真偽未確認)

・ハイポネックス培地で日本産の多くのランが一応は育成できるが、一部のランは濃度や添加物を工夫しても生長が
悪かったり、育たずに枯れてしまう場合がある。
たとえば一部の地生ランは、発芽初期には無機窒素肥料からアミノ酸を自力で合成する能力が欠けており、
化学肥料だけで作った培地では育成できない。

・それならアミノ酸を含んでいるペプトン(蛋白分解物)を加えりゃいいのでは?と思ったら甘いぞ。
そういうランでは高濃度の硝酸イオンの存在が代謝を狂わせるので、硝酸塩を含んでいるハイポネックスを使うこと自
体が発芽・生育障害の原因になる。逆にシランやエビネのような、早期に硝酸イオンを利用できるようになる種類は
粉末ハイポネックス培地で良く育つ。

・ちなみに北方系のランには硝酸イオンが発芽を阻害する種類が多い。そのため欧米の野生ランブリーダーは、窒素
源にアミノ酸(蛋白分解物)のみが添加されたMalmgren培地Norstog培地をしばしば使用している。

     *培地データベース>The Orchid seed bank Project,MCSG database

BM medium や Malmgren's modified medium など、調合済みの地生ラン用特殊培地のいくつかは日本でも流通し
はじめている。MP Biomedicalsの製品が和光純薬PhytoTecnology Labolatorysの製品がフナコシ株式会社、その
他にシグマ・アルドリッチ・ジャパン社も一部の培地を扱っているようだ。
フナコシのインターネットカタログでは培地の項を見ても収載されていないが「会社略号PHT、製品番号M551」あるい
は製品検索でorchidと入力するとMalmgren's Modified Terrestrial Orchid Mediumが出てくる。
なお、シグマは学校や企業以外の個人には販売をしていない。(他社については確認していない。)

・中国四川省の黄龍自然保護区でアツモリソウの増殖をしているドイツ資本の会社
ヘンダン・マウンテン・バイオテクノロジー社(日本語版ページ)
アツモリソウ用の各種培地(Malmgren培地も)の海外向け通販をしているようである。
筆者自身は注文したことがないので、この会社の信用性については不明。

・発葉して硝酸塩を利用できるようになると、硝酸イオンやアンモニウムイオンも共存していたほうが生育良好になる
場合が多いようだ。
そのため播種培地と、発葉後の移植培地で組成を変えることもある。

・シランやサギソウでは、有機窒素源の培地では発芽してもほとんど生育しなかった。
硝酸態窒素を主体にしないと駄目っぽい。

・シランは無機窒素肥料のみの培地で良く育つが、窒素成分比率はアンモニウムより硝酸が多めのほうが生育が順
調になる。しかしデンドロビウムはアンモニウムをシランより多めにしたほうが生育が良い、といったように窒素源の
適正混合比が種類によって異なる。
しかも同属でも種類ごとに(時には品種ごとに)適正培地は異なり、同一品種でも生育段階によって適正培地が異な
るときている・・いやもう、実にややこしい。
培地に関する、まとめ書籍は一応存在するが、古い情報も含めて機械的に集めただけなので初心者が読んでも混
乱するだけである。現在のところ実用レベルでまとめあげた参考資料はウェブ情報も含めてどこにも存在しない。
各自が実際に試してみる以外に検討方法は無い。

・種類によっては発芽に必要な生長ホルモンが種子に十分量含まれておらず、培地に人工合成ホルモン(BA:ベン
ジルアデニンなど)を添加して刺激しないと発芽しない、と報告されている文献もある。
しかし生育旺盛なランではホルモン添加は必要ない、というか種子内部のホルモンバランスを崩し、かえって発芽率
を悪くする。また、ホルモンは生育に悪影響を与えたり、異常を誘発する。ホルモンで発芽させた場合も、ある程度生
長したらホルモン無添加(あるいはごく低濃度)の培地に移植するのが基本。(東洋ランでは発芽時にホルモン無添
加培地、発芽後にホルモン添加培地に移植して発葉させるが、そういうのは例外)

・必須栄養素でも、どれかが突出して過剰に含まれていると、他の成分の吸収が阻害されて生育が悪くなる。
たとえば陽イオンのカルシウムが過剰だと、他の陽イオンの吸収に影響を与え、標準量のマグネシウムが含まれて
いる培地でマグネシウム欠乏症状が出る。
同様に陰イオンのリン酸が過剰だと、硝酸イオンなどの吸収を阻害して窒素欠乏と同じ状態になる。
また、仮にグルタミンやアスパラギンが必須アミノ酸であったとしても、これらを単独で大量添加するより、他のアミノ
酸もある程度添加したほうが生育が良い、ということがありうる。

・アミノ酸や有機酸を添加すると、無機イオンと反応して不溶化(吸収できなくなる)がおきたり、逆にキレート化して
吸収率が良くなったりすることはないか?
リンゴ酸やクエン酸はそれ自体が代謝系に影響を与えそうな気がするが・・(<データ収集中)

・ヤセウツボでは有機酸が種子休眠打破の有効物質の一つであるらしいが、ランの場合はどうか?
欧米の報文には果汁添加で発芽が良くなるとなっているものもあるのだが・・

・天然素材の成分には生育を阻害するものも多い。「完熟果実の果肉には発芽抑制物質が含まれる」というのは園
芸家にはほとんど常識。
筆者の経験から言うと、混ぜると露骨に生育が良くなる、という素材はそう簡単に見つかるものではない。特に地生
ランの播種培地は、へたに何か混ぜると悲惨な結果になるほうが多かった。

・以上のような理由から、「いろいろな素材をたっぷり混ぜれば栄養たっぷりで発育も良いに違いない」という考えは
誤りである。
時には特定の成分だけを抜いたり、思いっきり濃度を薄くしたりすることも検討しなければならない。
とりあえず窒素源の種類と濃度、リン酸の濃度は一部のランには間違いなく影響がある。

・硫酸イオンはどうか?シラン、ミルトニア、デンドロビウムでは硫酸イオン過剰だと生育阻害がおきるようだ。
含硫アミノ酸を添加した場合にも硫酸イオンは必要か?(<現在不明)

・シランや着生ランのように、地表で発芽してすぐ緑色になる種類では明るい場所で培養するが、
地中で発芽する種類では、発芽が確認できるまでは暗所培養が基本。
ただし例外的に、着生ランでも暗所のほうが発芽良好というものもあるようだ。

・なお、オキナワチドリの完熟種子には発芽抑制物質が含まれており、培地に直接播くと発芽しないことがある。
発芽抑制物質はフェノール系物質と言われており、理論上はアルカリ性の溶液で洗えば除去できる。
フラスコに播種する前に、消毒をかねて次亜塩素酸ナトリウムなどの薄い溶液で、種子の色がある程度薄くな
るまで洗ってから蒔く

 洗濯用の塩素系漂白剤(洗剤の入っていないもの。台所用は洗剤が入っているので激しく泡立つ)も消毒液として
使用できるが、家庭用製品には品質安定剤として強アルカリ性の水酸化ナトリウムが添加してあるため、洗浄効果
が非常に高い。種皮を軟化・分解する作用もあるため、種皮の撥水性や難吸水性も改善できて発芽率は著しく向上
する。

 ただし少し洗浄時間が長いと胚までダメージを与えて死滅させてしまうので、薬液の希釈倍率・洗浄時間の調節が
難しい。慣れないうちは薄い薬液で、その分時間を長くかけて洗浄したほうが安全だろう。

 オキナワチドリの完熟種子の場合、管理人の目安は10倍に希釈した漂白剤で30分。ただし薬液の劣化程度(古
くなると成分分解して有効塩素濃度が下がる)や気温、種子の成熟度、種子表面の汚染状況などによって微妙に調
整せねばならない。種子と薬液のなじみぐあい、種子の漂白度などを見て判断するが、成功と失敗の差は紙一重、
ほとんど職人芸の世界である。

 言うまでもないが、ランの種類によって適正洗浄時間は異なる。一般論として小さい種子は洗浄に弱く、大きめ(ラ
ンとしては)の種子は時間をかけて洗浄しないと雑菌が除去できない。ちなみに種皮が厚かったり、撥水性の高い特
殊な地生ラン種子の場合は1時間以上も洗浄することがある。

・ウチョウランなどの場合は洗浄は必須ではないが、一定期間、5℃以下の低温に当てないと発芽しない系統が
多い。温帯性の地生ランの完熟種子は、冬にフラスコを暖かい場所に置くと永久に発芽しなかったりする。

・オキナワチドリは関東地方では夏ー室温、冬ー温室管理で問題なく発芽するそうだ。



・筆者テスト中「修正ハイポネックス培地 関東2号」 (2007・07・21発表:インターネット文献)

      ハイポネックス粉末(6.5−6−19)     0.5g
      ハイポネックス開花促進(0−6−4)     1.0ml
      酵母粉末(健康食品)             500mg
      ポリペプトン                   500mg
      グラニュー糖                    20g
      製菓用寒天                     8g
      ベンジルアデニン                0.2mg
      水道水                     1000ml

この培地は知人がJA培地を模倣し、窒素源中の硝酸イオン比率を下げることを目的に考案した。
(ランの保護に利用してもらいたいので情報は自由に利用してほしいとの事。公表承認済)

上記処方は、ある程度の硝酸塩が培地に添加されているように調整したものだが、硝酸イオンと他の窒素源の好適
濃度・最適混合比はランの種類によって異なる。種類によってはハイポネックス粉末を入れないほうが良いものもあ
るし、逆に粉末ハイポネックスのみを使用したほうが良いランも・・って、それ普通のハイポネックス培地ぢゃん。

上記はあくまで参考であり、追試のための叩き台である。
粉末の代わりに他の液肥(硝酸:アンモニアの比率が半々ぐらいのものが多い)を使ったらどうなるだろうか?(*)

*2008年追記:「ハイポネックス洋ラン液(6−6−6)」を1mlほど加えた培地を作成してみたところ、テス
ト用に使用したガンゼキラン及び欧州産の数属の地生蘭のすべてにおいて著しい発芽阻害がみられた。
この害作用は他の栄養成分の含有量の多寡とは無関係に出現した。
しかし、生育が進んで緑葉が出たあとだと、逆に生育促進に働く場合もあった。
・・「洋ラン液」は播種培地には使用不可、移植培地にはOKってことだろうか???
データ不足につき現在追試中。
培地に活性炭粉末を加えると成分吸着があるので結果も変わってくるっぽい。

酵母末はビタミンなど多種の有機成分や、アミノ酸も豊富に含む。
酵母末だけでアミノ酸源として十分のような気もするが、逆に酵母が生育阻害成分を含んでいて入れすぎると害があ
る可能性も考えねばならない。理想を言えば酵母とペプトンそれぞれで添加効果を確認したほうが良い。
サギソウ、シラン、ナリヤランなどはビタミン・アミノ酸類を入れると、むしろ生育阻害に働くっぽいのでプレーンな粉末
ハイポネックス培地を基準培地として比較検討すべきだろう。
(注:サギソウに近縁のハベナリア属では有機物を添加しないと枯死する種類、硝酸イオンが生育阻害に働くらしき
種類もある。サギソウ類は種特異性がはなはだしく、属としての一般論が語れないグループである)

ポリペプトンは牛乳カゼイン由来の商品と、大豆由来の製品では各種アミノ酸の含有組成が異なる。
どちらが良いかは実際に試してみないと判らない。
ペプトンの代わりに単独アミノ酸、たとえばL−グルタミン(スポーツ選手用のサプリメントとして市販)を加えてみるな
ど、さまざまな組成変更が考えられる。

「開花」にはトレハロース(ラン菌が主用な栄養としている二糖類)が含まれる。
トレハロースはランも吸収利用が可能であるが、一般のランの無菌培養の炭素源としてはスクロース(砂糖)に劣ると
いう報告が多い。しかし難発芽性ランでは発芽率などへの影響も考えられるので検討中である。

ベンジルアデニンは芽や葉の生長を促進する「サイトカイニン類」の一つで、生育の非常に遅いランを培養する時、培
地にごく微量を添加すると地上部の発育を早める効果がある。
ただし植物にとっては劇薬で、添加濃度を誤ると生育は早まっても多芽体を形成したり発根が遅れたり、ホルモン無
添加培地に移植しても影響が長く残ってまともな苗が得られなくなることもある。まあ「諸刃の剣」というところか。

上記の培地には発根を促進する「オーキシン類」は添加していないが、サイトカイニンとオーキシンは併用することで
相乗効果があるのでナフタレン酢酸などを追加してみても良いかもしれない。
ちなみに両者ともに高濃度だと根も葉も伸びず、細胞が無秩序に増殖して不定形の細胞塊になってしまったりする。
植物の種類はもちろん、系統によっても適正濃度が微妙に異なるので使い方がたいへん難しい薬剤である。組織培
養の参考文献を検索し熟読してから、実地で追試確認してほしい。

難発芽種の発芽培地ではベンジルアデニンを2〜5mgぐらいまで増量し、ナフタレン酢酸も適量(一例としてベンジ
ルアデニンの10分の1濃度)を加えるという。前述のようにホルモン類は発芽後の生育に悪影響があるので、ある程
度育ったらホルモンが極微量、あるいは無添加の固体培地に移植する。(発芽・生育が旺盛なランの場合はホルモ
ンを入れるとものすごい生育異常をひきおこすので、入れないほうが良い。)

エビネなどの場合、生育の非常に遅い系統は移植培地にナフタレン酢酸をごく微量添加(0.1mg程度、系統によっ
て反応差。播種培地はホルモン無添加)しておくと生育促進効果があるそうだ。エビネ類はベンジルアデニンが生育
異常をひきおこしやすく、使用するのが難しいらしい。まあ実際に試してみると例外もあるだろうと思うが・・

*2009年追記いろいろ試してみたが、管理人がテストした限りでは発芽培地にホルモンは入れないほう
が良いっぽい。文献でホルモン有効となっている種類でも、「明らかに発芽率が良くなる」というものは認め
られず、逆に発芽阻害されたケースが続出した。現時点で管理人が確実に有用だと言えるのは、東洋蘭系
シンビジウムのリゾーム移植培地に使用した場合のみである。

ココナッツウォーターや生野菜など、天然の生長ホルモンを含む素材も試してみる価値があるが、発芽阻害に働く場
合が多いようだ。
また天然素材は結果の再現性に問題があることにも留意すること。

糖濃度も高いと発芽を阻害するが、発芽後は糖濃度がある程度濃いほうが生育が良好になることもあるので、糖を
30g(標準量)にしてみるとかいろいろ比較検討してみること。
(ただし種類によっては20gを越えるとかえって生育が阻害されることもある。)

完熟種子では発芽しない難発芽種は、胚が形成された直後の未熟種子を次亜塩素酸ナトリウム水溶液などで洗浄
してから上記の液体培地(寒天抜き)に播種する。古い文献には「未熟種子を消毒すると死滅する」と記載されている
ものがあるが、筆者の経験から言うと必ずしもそうとは言えない。
まあ消毒時間などは完熟種子以上に微妙だが、
未熟種子+洗浄でないと発芽困難な種類がけっこうある

標準ハイポネックス培地で育成が難しい地生ランで、関東2号(のホルモン抜き)を使用すると育成可能なものが何
種か見つかった。
現在さらにデータ収集中である。

知人宅ではヨーロッパ産地生蘭、オフリス(Ophrys ferrum-equinum:下画像)を培養中だが、現在関東2号に代わっ
てテスト中の培地は下記のとおり。混合比はいまだ検討中で、改良の余地があるようだ。

要点としては、
・オフリス用培地はアルカリ性のほうが良いらしい。適正pHは検討中。
・オフリスは有機肥料でないと同化吸収できないようなので、無機化学肥料はほとんど入れなくて良い。


「マルパチ培地Ver2.0」 (2011・11・30発表:インターネット文献)

      ハイポネックス開花促進(0−6−4)          0.1ml
      酵母粉末(健康食品)                  1000mg
      グラニュー糖                          10g
      製菓用寒天                           8g
      ジャガイモ5mm角切り       1フラスコあたり20個程度
      市販ビタミン錠(B群・ナイアシン・葉酸等混合)  5分の1錠
      粉末活性炭                           1g
      水道水                           1000ml
      pH 7.5に調整
マルパチとは「Malmgren培地のパチモン」の意だそうな。(笑)

ランの種類によって最適の濃度・組成は異なるので、種類ごとにさまざまな培地、いろいろな濃度の組合せを一つず
つ調べていかねばならない。気が遠くなるような作業である。

おまけ:
「修正ハイポネックス培地 サギソウ移植用 試作01」 (2010・05・10発表:インターネット文献)

      ハイポネックス粉末(6.5−6−19)         1.5g
      ハイポネックス洋ラン液(6−6−6)            1.0ml
      グラニュー糖                          25g
      製菓用寒天                           8g
      粉末活性炭                           1g
      水道水                           1000ml

サギソウの場合、緑葉が出始めたプロトコームは「洋ラン液」を加えた培地のほうが生育が良好になるようだ。
上記は実験段階のもので、適正配合比・適正濃度はまだ検討中。
ハイポネックス全量を「洋ラン液」に変えたらどうなるだろうか?(未実験)

「ハーブ用」(6−6−6、窒素量の一部がアミノ酸)などを使用するとまた違った効果があると思われる。

・・インターネットで検索しても、旧態依然のハイポネックス培地やMS培地しか情報が無い。
日本産のランには、そんなものでは育成できない種類がたくさんあるというのに。
君たちは30年前の技術の孫引きだけで満足なのか?バイオ技術は伝統芸能じゃないんだぞ?

ここまで全部読んだ人はたぶん変態。
 









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