自生地画像

沖縄本島、海岸の自生地。
台風の暴風と荒波で、表土がごっそり剥ぎ取られてしまった。
非石灰質の岩盤が露出している。
自生していたオキナワチドリも根こそぎ洗い流されてしまった。

痛々しい・・と思うが、このような表土撹乱がなければ、
樹木が茂ってオキナワチドリは消滅してしまうのだ。


岩盤にたまった、わずかな土に種がとんで、オキナワチドリが復活しはじめる。
肥料分もほとんど無いだろうし、水分すら満足ではあるまい。
それでも超小型化しつつも開花するから驚きだ。
比較用の10円玉が巨大に見える。(合成画像ではありません)


よくもまあ、こんな場所に生えるなあと思う。
発芽にはラン菌が必要だと思うが、いったいどんな菌がいるのだろう?


亜熱帯では岩盤の風化も早く、しだいに土がたまってくる。
風で種子散布されるキク科植物や、種子の細かいラン科、シダ類などが
隣接地から次々と入り込み、しだいににぎやかになってくる。


亜熱帯では有機物は急速に分解されてしまうので、腐植土はほとんど無い。
この地区の母岩は非石灰岩で、
風化すると国頭真土(くにがみまーじ)と呼ばれる土になるらしい。


この場所は、風化しにくい固い石が母岩に混じっていたようだ。


こちらはかなり砂っぽい。
いずれにしても、腐食質はほとんど存在していない。


このへんは完全な赤土状態。
このような良い土には、すぐに他の植物が生えてきて、
オキナワチドリは競争に負けて消滅する。


雨で流された土がたまって固まって、運動場みたいにガチガチになった所にも生えてくる。
こういう場所で開花結実すると、体力をつかいはたして消滅してしまうこともあるようだ。
基本的には、新しくできた荒地に種をとばして世代更新しながら生きている植物なのだろう。


画像ではわかりにくいが、土砂くずれ防止のため土嚢をつまれた場所でも、
キク科の草本に混じってオキナワチドリが生えていた。(中央部)
北海道ではこういう場所にハクサンチドリが生えてくるそうだが、
チドリ類というのは弱いようでいて、案外たくましい植物でもある。

とはいえ、こういう二次自生地は環境が不安定で、群落が永続することはほとんどない。
種子供給している元自生地が存続できなくなれば、
その地区のオキナワチドリは全部消える。

安定して自生している場所が開発や乱穫で破壊されることは、この種の存続にとって非常に大きなダメージとなる。
近年、沖縄本島では自生地が激減しており、今後が心配である。

 


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