「紅一点花」

1987年、沖縄の園芸家グループが発見したオキナワチドリの変異個体が、園芸雑誌
に発表されました。
「あけもどろ」
(「自然と野生ラン」誌1987年7月号より引用)

「あけもどろ」とは琉球語の「明けの戻り」、ヤマト言葉でいえば「あけぼの」です。

 この頃はまだチドリ類のバイオ増殖が一般化しておらず、唇弁(しんべん:チドリ類の一
番大きな花弁)に大きな赤い斑点があるウチョウラン、つまり紅一点花は1本数十万円の
値段がついていました。オキナワチドリの「紅一点花」も注目を集めたことは言うまでも
ありません。しかし、この品種は増殖普及されるには至りませんでした。

(>>「紅一点花」の人工増殖と遺伝)

 「紅一点花」第一号「あけもどろ」はどちらかといえば虚弱な体質であり、当時はオキナワチドリの栽培に慣れ
た趣味家がほとんどいなかったこともあって、発見後まもなく絶種してしまいました。現在、あけもどろ直系の子孫は
現存が確認できていません。

発見地もその後の環境変化で自生個体がすべて消滅しており、この系統の個体が再発見されることはもうありませ
ん。

 幸いにして、同じ場所から採取された「炎」ほか、いくつかの類似個体が栽培下で現存
しており、それらからの増殖個体が「あけもどろ系」として、現在も ごく稀に販売されて
います。

>「あけもどろ系」に進む

  既知の「紅一点花」の自生地は、道路工事や植生遷移によってことごとく消失しており、新しい「紅一点花」が
野生で発見される可能性はほとんど無いと思われます。

 オキナワチドリは、ウチョウランのように商業的に増殖されてはいません。
園芸業者が扱っている変異選別個体は、元をたどってみると、数人の個人栽培家が、趣味で育てた余剰株を供給し
ているだけのようです。後続の栽培家が現れなければ、変異個体の系譜が途絶えてしまうことは充分ありえます。

 新しい園芸資源として後世に伝えるため、「品種の番人」として保存栽培に参加していくか。
それとも、自分だけが楽しめればそれで良し、誰も保存しようとせずに消え去るようなものであるなら、その程度の花
に自分が関与する意味はない、と割り切って育てるか。

あなただったら、どちらの道を選びますか・・?









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