「あけもどろ系」 と 「白紫点花」

写真は銘品「炎」。「あけもどろ」と同じ場所で採取されたと伝えられる個体です。
  
「炎」:発見時、唇弁の模様が漢字の炎に似ていたことから命名

*「炎」は増殖普及される過程で名称に混乱があったそうで、類似個体や実生個体と入れ替わったり、同一個体が
異銘で栽培されている可能性があるそうです。

 現存する野生由来の銘品としては、もっとも鑑賞価値が高いと言われている銘花で
す。しかし性質がやや弱く、上手に作りこなさないと小さな花しか咲いてくれないこともあ
って、ほとんど普及していません。



さて、「炎」(あるいは同産地個体)の実生から出現したといわれるのがこの系統です。
 
(実生・無名個体) 葯室の色を上の「炎」と比較してみてください。

「炎」とそっくりですが、地色が白く、葯室と花粉塊が黄色です。
園芸業者は「白紫点花」「白地一点花」などの名称で販売しています。

ウチョウランの白紫点は花茎などには赤紫系色素が発色しませんが、この個体は、よく見ると花弁や花茎に色素着
色が認められます。どうやらウチョウランの白紫点花と同一視できるものではないようです。
「準白紫点花」とでも呼べば良いのでしょうか。



実生兄弟株に「白花」が出現したという未確認情報もあり、この系統はかなり特殊な遺伝子を持っていると思われる
ので、現在、検定交配を進めています。
ちなみに「紅一点花」との交配第一世代は、地色の薄い「紅一点花」になっています。

*2008年追記
検定終了。この系統は白紫点ではありませんです。結果解説はこちら


参考に、花弁や花茎にほとんど色素のない「白紫点花」も紹介しておきます。
 
「早乙女」 伝・徳之島産    葯室と花粉は黄色

鹿児島系なので、本来なら地色は薄いピンク色のはずです。
花茎は白花個体に類似した、ほとんど濁りのない緑色をしています。



沖縄系であれば、地色がほとんど白にしか見えない淡色花は、それほど珍しいものでは
ありません。指摘されなければ、この個体がきわめて珍しい系統である事に気づく人は
ほとんどいないでしょう。

 『「早乙女」×(紅一点花)』セルフ、花粉塊は黄色。

現在、早乙女の白紫点形質を検定交配中ですが、F2世代の分離比からみて単純な劣性遺伝ではないかと思われ
ます。だとすれば、この系統を使うことで白地「一点」花の作出が可能になります。

ただ、オキナワチドリの「紅一点花」は多因子遺伝なので、個人育種のレベルでは完成させるまで気の遠くなるよう
な時間がかかることでしょう。



 あけもどろ系の親株の栽培確立にはかなりの時間がかかり、実生増殖がはじまったのは発見後、 
だいぶ年月がたってからでした。

 オキナワチドリとしては最も早く実生増殖され、「白地一点花」も相当数が販売流通したのですが、その頃
にはチドリ類のバイオ増殖が普及し、チドリ類の値崩れが始まっていたため、ほとんど注目を集めることは
ありませんでした。こうして、ブームに乗りそこねたオキナワチドリは、その後は商業生産されることなく今日
に至ります。

しかし一部の愛好家たちは、今もひそかにオキナワチドリの育種を進めています。

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