Malmgren培地について

 Malmugren medium (SM-organic) はスウェーデンのSvante Malmgren氏が考案した、地生ラン専
用培地である。
地生ラン(特に北方系)には高濃度の硝酸イオンが培地に含まれていると発芽・生育が阻害される種類があ
り、それを回避するためにアンモニウム化合物、あるいは有機窒素化合物のアミノ酸を窒素源として添加し
ているのが特徴である。



<培地組成>

Svante Malmgren氏のホームページ
http://www.lidaforsgarden.com/Orchids/engelsk.htm
より抜粋意訳。解釈に間違いがあるかもしれないので、
実践する場合には必ず元サイトの記事を参照すること。

   Ca3(PO4)2  リン酸3カルシウム(2リン酸3カルシウム)  50〜100mg
   KH2PO4    リン酸2水素カリウム(第一リン酸カリウム) 50〜100mg
   MgSO4     硫酸マグネシウム                 50〜100mg
   ショ糖 (=砂糖。グラニュー糖で可と思われる)         10〜15g (10000〜15000mg)
   活性炭粉末                               0.5〜1.0g (500〜1000mg)
   寒天                                   4〜5g (*注1)
   水道水(*注2)                           1000ml
   PH                                    5.5〜6.0

上記に加え、窒素源として添加
   Vaminolac(t) (*注3)  5ml = 18種のアミノ酸が合計で約300mg含まれる

   またはNH4H2PO4 リン酸二水素アンモニウム(第一リン酸アンモニウム、燐安) 150mg
   および  NH4NO3 硝酸アンモニウム(硝安) 100mg

さらに微量有機物の供給源として、野菜や果物を少量加える。
一例としてターニップ(西洋カブ) 培地20mlあたり1cm角切り1個 
(日本では入手困難。日本のカブで代用できるかどうかはデータ無し。)

またはパイナップルジュース 10〜25ml/l
あるいはジャガイモ、バナナの小片、ココナッツミルクなど1〜2種類を選んで添加する。(*注4)
これ以外の野菜・果物にも有効なものがある。

注1:日本の製菓用の粉末寒天を使用した場合、5gでは培地が固化しない。
筆者の経験では7gだと柔らかすぎ、8gで少し固いかな?と感じる程度。PHや添加物によってできあがりの固さが
異なるので各自で調節すること。

ちなみに固化剤に寒天でなくゲランガムを使用すると、無機塩濃度が低いため固まらないそうである。

注2:スウェーデンの水道水と日本の水道水では成分が異なるかもしれない。

注3:Vaminolac(t)は欧州圏で発売されている医療用の点滴製剤らしいが、日本では使用されていない。
成分を見る限りでは単なるアミノ酸の混合液のようである。

生物関連の試薬が入手できる人ならペプトンなどで代用すれば良いようだが、適正添加量は不明。
無機窒素源と併用する場合は普通1g/lから多くても2g/lぐらいしか入れないが、ペプトンや粉末酵母のアミノ酸含量
は3〜7%ぐらいらしいので、アミノ酸300mg相当だとけっこう大量に入れないと駄目かもしれない。
ペプトン4g/l という文献があったが、それが適正量であるかは定かでない。ランの種類にもよるだろうし、使用する
製品によっても異なると思われる。
(2008年追記:知人が活性炭抜きでペプトンや酵母を1g/l以上入れたら生育が悪くなったそうです。)

その他の代用品としてはアミノ酸サプリメントが考えられる。これは健康食品の通販サイトから購入できる。
ダイエット用の分枝鎖アミノ酸(いわゆる「燃焼系アミノ酸」)のみの製品は不可。なるべく多種多様なアミノ酸、特に
グルタミンやアスパラギン、アルギニンが入っているものを選ぶ。
汗をかく人のためにナトリウム(食塩)が添加されている製品もあるので、塩が入っていないことを確認する。
ビタミンや酸味料、その他の添加物も入っていることが多いので必ず成分表をチェックすること。

アミノ酸の混合組成が製品によって異なるし、ランの種類によってはアミノ酸単独よりもアンモニウム化合物や硝酸
塩を使ったほうが窒素源として好適な場合もあるようなので、さまざまな配合比でテストしてみる必要がある。

注4:筆者の経験ではココナッツ系素材は品質が不安定で使いづらいので、取り寄せてまで試す必要は無いと思う。
他の素材も場合によって生育阻害に働くことがある。天然素材は成分が一定ではないので、原典どおりの再現性を
期待してはならない。いろいろな素材を比較実験して自分で確認すること。
また、ジュースなどの酸性素材を入れる場合、PH調節に使う薬品の影響も出てくる。ジュースの中和に重炭酸ナトリ
ウム、アンモニア水、水酸化カリウム・・など何を使うかで培地組成が変わってくることに留意する。

その他:
欧州産の地生ランではビタミンB群の存在が必須らしいので、ビタミン剤などを加えてみても良いかもしれない。(*)
(*2008年追記:欧州種では少し混ぜたほうが良いらしいです。)

日本産の地生ランでは過剰なビタミン添加はむしろ生育阻害に働く種類もあるので、必ず無添加の対象区を作って
比較してみること。

アツモリソウ類や未熟種子の培養では植物生長ホルモンも添加する。一般の完熟種子ではむしろ有害であるが、ご
く微量だと生育促進に働く場合もある。野菜類に含まれる天然生長ホルモンは概して熱に弱いので、加熱せずに除
菌フィルターで濾過滅菌して培地に添加すると、また変わった効果があると思われる。

活性炭は生育の旺盛なランでは省略も可能だが、生育の遅いランでは入れた場合と入れない場合で生育に著しい
差が生ずることがあるそうだ。活性炭は生育過程で分泌されるフェノール類などの生育阻害物質を吸着すると思われ
るが、生長ホルモンなども吸着するようなので必ずしも好影響ばかりとは限らない。

ミネラル系の微量要素は不純物として含まれる量で十分だと思われるが、キレート鉄は入手可能なら添加したほう
が良いかもしれない。

繰り返すが、これは硝酸態窒素をうまく利用できないラン、主として北方系地生ラン用の培地である
着生ラン、エビネ、シラン、サギソウなどハイポネックス培地(=硝酸塩が主窒素源)で生長の良いランに使うと生育
が非常に悪い。
逆に言うと、亜熱帯のランでハイポネックス培地でうまく育たないランには試してみる価値がある。

薬品解説:

リン酸3カルシウムは食品添加物としても使用される安全なカルシウム剤である。
薬局で取り寄せられると思う。
水にほとんど溶けない(培地中に混ぜると少しずつ溶ける)ので、よく混ぜながら培養容器に分注すること。

第一リン酸カリウムは肥料だが、ごく一部の店でしか売ってない。
薬局で試薬として取り寄せてもらったほうが簡単か?

硫酸マグネシウムは下剤である。これも薬局で聞いてみよう。

燐安や硝安は肥料として普通に使われるが、一般に流通しているのは各種肥料と混合して配合肥料にしたものば
かりである。硝安は爆薬原料なので、入手に難があるのはむしろ当然かもしれない。
農協か薬品会社に直接発注できない人は単品の入手は難しそうだ。
まあアンモニア水と酸を混ぜて中和すれば作れるが・・。
ご家庭レベルでは市販の液肥などを工夫して混ぜてみるのが実用的かもしれない。
(参考>市販肥料で作る培地「関東2号」

学校や企業であれば調合済みのものが試薬メーカーから入手できるが、割高なのが欠点か。









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