オキナワチドリの育て方 (4)
虫害:
アブラムシ、コナジラミ、アザミウマ(スリップス)が3大害虫です。いずれも葉裏につく小さな虫です。
アブラムシは説明するまでもないでしょう。
単為生殖・卵胎生、つまりメス一匹で幼虫を生み、みるみるうちに殖えます。
致命的食害は少ないですが、ウイルスを媒介することがあるので要注意です。
葉の薄い植物にガス噴射式のスプレー殺虫剤を使うと、葉が枯れてしまいます。
かつては自分で農薬を調合して散布しなければなりませんでしたが、最近は調合済みのハンドスプレー式
殺虫剤が発売され、手軽に使えるようになりました。
あ〜ぶ〜ら〜む〜し〜〜。
コナジラミは小さな白い虫です。汁を吸うだけなので直接葉を枯らすことは少ないのですが、排泄物
にカビが生えて葉を腐らせます。繁殖力が強く、成虫は羽があって飛んで広がるので油断するとあっという 間に蔓延し、被害が加速的に大きくなります。
コナジラミ成虫。幼虫は1ミリ以下の半透明・楕円形で、カイガラムシに似ている。
アザミウマは葉裏だけをかじり、葉を薄くして枯らすという特殊な食べ方をします。
ダニのように小さく、物陰に隠れる習性があるので、虫がいても葉が枯れはじめるまで気がつきません。
おまけに葉が枯れ始める頃には他の葉に移動してしまっている場合が多く、食害の特徴を知らない栽培家
は何かの病気と勘違いすることが多いようです。(下写真)
左:アザミウマの食害をうけた葉。上から見ても、食害がよくわからないが・・
右:葉をめくってみると葉裏の肉がかじられて表皮だけになっている。黒い糞が点々とあるのが特徴。
アザミウマは目のいい人であれば本体を見つけることができます。新芽の中や葉の裏を丹念に探し
てみると、細長いダニのような虫がチョロチョロ動いて物陰に隠れようとするのに気がつくでしょう。つかまえ ようとするとピョンと跳ねて、あっという間にどこかに行ってしまいます。
アザミウマの一種(成虫)
写真だと大きく見えますが実際の体長は1mm。上のアブラムシと比較してみてください。
写真の種類は黒いですが、アザミウマには種類が多く、色もさまざまです。
幼虫は一般に黄白色や薄いオレンジ色で、きわめて小さいため老眼だとまず見えません。
(画像は「アザミウマ」「スリップス」で検索してみてください。)
似たような虫は多く、中には害虫アザミウマを捕食する益虫アザミウマもいます。
こんな形の虫がいるかどうかよりも、葉に食痕があるかどうかチェックすることが重要です。
オキナワチドリは新芽をかじられると枯れてしまうので、
防除が遅れると、最悪の場合には苗が全滅します。
オキナワチドリは葉裏に農薬液を散布するのが難しいので、これらの虫には根から吸収されて効く移行性
殺虫剤の併用が効果的です。薬剤耐性のない普通のアブラムシはオルトラン粒剤が有効ですが、コナジラ ミやアザミウマにはオルトランがもともと無効の種類がいます。ベストガード粒剤は効果がありますが、最近 の虫はかなり大量に使わないと効果がないようです。
最近発売された新薬も現在テスト中です。
シュンラン、カンラン、セッコク、フウランなどは採取後100年以上と伝えられる系統が現存しており、人間
よりも長生きです。しかしウチョウランでは、30年以上栽培されている系統は繁殖率が急激に落ち、あちこ ちに分散して栽培されている個体が、時期を同じくして枯れはじめる例が報告されています。
筆者はオキナワチドリの栽培歴が浅いので、オキナワチドリに「寿命」があるかどうかはっきりとはわかり
ません。ですが、ある栽培家から、15年ほど栽培していたオキナワチドリが突然元気がなくなり、原因不明 の枯れ方をしたという話をうかがいました。オキナワチドリもウチョウランと同程度の年数で「寿命」が来るの ではないかと推定しています。
これは寿命というより、複数のウイルスが重複感染していくことによって体力が弱っていくのだという説も
あります。それが事実なら、長期栽培のためにはウイルス防除が重要と言えるでしょう。しかしウイルス病 は感染植物の汁を吸った虫が飛来するだけで感染する場合があり、無菌隔離室でもない限りウイルスの無 い状態を完璧に保つのは困難です。
系統維持のためには、若く元気なうちに種子を採取し、世代更新しておくことが必要かもしれません。
(追記)
1971年に選別された銘品「沖の輪」が現存していますので、
30年は大丈夫のようです。
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